知識 vs スキル
コンサルタントに求められる要素は、大きく知識とスキルに大別することができます。
知識には、財務会計やIT、生産管理、マーケティングなどの業務に関する知識や業界動向などの知識などがあります。スキルとは、インタビューやコミュニケーション、ロジカルシンキング、プレゼンテーション等、コンサルタントが仕事をこなす上でベースになる能力です。
もちろん、これらの両方をバランスよく兼ね備えることが大切なのですが、どちらか一方を選択しなければならないとしたら、どちらを選ぶのがよいのでしょうか。
答えは、指向するコンサルティングの方向性や、どのようなテーマを取り扱うコンサルタントを目指すかによって異なるのも事実ですが、どちらかと言われれば、私は迷わずスキルを選択します。
コンサルタントになりたての人を見ていると、自分がクライアントより豊富な知識や専門性を持つことで、気の利いた発言をしたり、クライアントへの気づきを与えることができるようになり、それがバリューにつながる、と考えているケースが多いように思います。
確かに、クライアントの発言を理解できないようでは困りますが、ある分野でしかもその企業の独自のカルチャーの中で、何年間も仕事を行ってきたクライアントに勝る専門性を発揮するのは、容易ではありません。
また、知識はすぐに陳腐化するため、常に新しい情報をインプットしていく必要があります。インターネットが普及する以前であれば、クライアントより幅広い情報にアクセスできることが優位性につながりましたが、現在はコンサルタントが入手できる情報とクライアントが入手できる情報の差は縮小しています。そのような中でバリューを発揮していくのは容易ではありません。
一方、スキルに目を向けてみるとどうでしょうか。たとえ、テーマは異なっていたとしても、表層的な問題点から真の原因を見つけ出し、それらに対する対策を想起、優先順位付けした上で実行計画に落とし込んでいく、という一連の作業を円滑にこなすためのスキルを持っていれば、ある程度のレベルで作業を進めていくことができます。
このことは、優秀な経営者を見れば明らかです。経営者には、技術系の出身者や営業系の出身者など、様々なキャリアパスやバックグラウンドを持った方がいます。しかしながら、たとえ技術系の出身者であっても営業に関する意志決定を行う必要があり、営業系の出身者であって技術に関する意志決定を行わなければなりません。
優秀な経営者は、すべての分野に精通した知識を持っているのかというとそんなことはありません。出身分野には詳しいでしょうが、不案内な分野もあります。にもかかわらず、彼らが適切な意志決定をできるのはなぜでしょうか。
私は、彼らが意志決定に求められる卓越したスキルを持っているからだと考えます。意志決定に必要な情報が何かを見極め、それらの情報を集めたり、人の意見を聞くことができれば、適切な意志決定はかなりの確度でできると思います。
また、経営者の方々と話をしていると、物事を抽象化したり、本質を見抜く力にしばしば感心させられます。たとえ自分の専門分野でない話であっても、物事の本質を見抜けるのは、決して知識に依存せず、本質を見抜くために必要なスキルを兼ね備えているからです。
さらに、スキルは汎用的で陳腐化しません。一度身につければ、一生使い続けることができるのです。
このような理由から、私は知識よりも、スキルを身につけ、磨くことを意識しています。
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